渋滞する首都デリーの幹線道路と、渋滞をくぐり抜けて走るリキシャー。 |
昨日、インド出張より無事に戻ってまいりました。インドでは様々な人達との出会いもあり、今回の出張目的であるインドの中長期的な経済見通しに関しても現地駐在員の方達より沢山の有益な情報を得ることができました。私自身も投資している積立投資プランの中で、インド株ファンドは中長期保有を前提として運用しておりますが、この判断が間違ってはいなかったことを今回の出張で確信できたとともに、インドには新興国特有のリスクもあり、こうしたリスクを今後も注視していかなければならないと思いました。それでは私が現地駐在員の方にインタビューした内容をもとに、今回のインド出張記レポートをご報告させて頂きます。
1.インドの中長期的な経済見通し
インドには、デリー、ムンバイ、コルカタ、チェンナイの4大都市があり、これらの都市を中心とするエリアで今後も安定的な経済成長が見込まれます。インドでは食料自給率が100%を超えており、農業がGDPの3割を占めるなど、内需主導型経済となっています。また、近年においては、ソフトウェアやコールセンターなどの情報サービス産業、自動車や製薬などの輸出産業も成長しています。
2.人口と所得増加の見通し
出生率が高く、現在、11億人の人口が2030年代には14億人を超えて中国を追い越すと言われております。国民の平均年齢は23歳で、若年層が多く、市場に豊富な労働力を提供しています。年収3,000ドル以上の中間層は1億人以上いると言われており、今後も安定的に増加していくことが見込まれます。
3.中間層が好む製品・サービス・価格帯
タタ自動車が販売開始した低価格カー「ナノ」に代表されるように、質の高い低価格な製品・サービスがインドでは好まれるようです。日本勢ではスズキが自動車販売シェアの5割を占めるなど、古くからインド市場に進出していたメーカーが優位性を保っています。家電製品はLG、サムソンなど韓国勢のシェアが高く、インドへの進出が遅れた日本の家電メーカーは価格が高いこともあり、苦戦しています。
4.インド人の国民性
州が違えば、民族と言語が異なり、中央政府よりも州政府の権限が強く、連邦国家に近い体制となっています。思想は社会主義に近く、出世して地位を得たり、働いて富を得ることに関して、必ずしも熱心とは言えない国民性のようです。そのため、工場の現場においても、品質改善などの提案が現場から上がってくることはほとんどなく、トップダウン型の地元企業が多いようです。新しいことに挑戦して得られるチャンスよりも、失敗して今の地位を失うリスクの方が大きいと考える従業員の方が多いようです。
5.中国との比較でインドは世界の工場となり得るか?
中国が単純労働型の請け負いで世界の工場として成功したのに対し、インドは自国で設計・開発を行なうなど知識集約型の製品を製造することが可能です。労働力も豊富にありますが、いまだに製造業よりも農業の比率が高く、識字率も58%と低いため、これまでの経済成長では中国の後塵を拝してきました。近年になって、関税率を引き下げ、外資を積極導入していることから、中長期的には製造業の成長が見込まれますが、世界の工場として中国に追いつくには、まだまだ長い時間がかかりそうです。
6.インド経済のマイナス要因とリスク
電力、道路、空港、港湾設備などのインフラ建設が遅れており、日常的に停電が発生するため、工場には自家発電設備が必須となるなど、製造コストが高くなる原因となっています。自動車台数の増加に道路の建設が追い付いていないため、市街地の主要道路は慢性的に渋滞しています。国際空港はゲート数が少なく、全ての飛行機へ搭乗するために、ゲートからバスに乗って移動しなければなりません。ムンバイやチェンナイの港湾設備も既に飽和状態となっており、物流が輸出産業にとって足かせとなっています。また、毎年6月~9月はモンスーン気候の影響で工事ができなくなることがあるため、インフラ建設が遅れる原因となっています。
7.カースト制度と宗教闘争の影響
インドに根強く残る身分制度であるカーストの影響により、人々には職業選択の自由が与えられていません。そのため、カーストの低いエリートはIT業界や外資系金融などカーストの影響を受けない職業を選ぶ傾向があります。カーストは職業を与える意味もあり、基本的に親と同じ職業につくことになります。現世で良い行ないをすれば、生まれ変わったときに上位のカーストに上がることができると信じられているため、現状が良い生活ではなくても、それに甘んじる傾向があります。インド国民の80%がヒンズー教徒、13%がイスラム教徒ですが、カシミール地方の領土紛争などを背景とするテロ事件も発生しており、今後も宗教闘争の影響が残ることが危惧されます。
以上が今回のインド出張レポートとなります。新聞やネットで情報収集することもできますが、実際に現地へ行って、見たり聞いたりすることで、インドという国に対する理解が深まり、インド人に対しても親近感を抱くことができるようになりました。では、インド人の日本人に対する心情はどうかというと、日露戦争で日本が勝利して以来、同じ有色人種として尊敬されており、第二次世界大戦時に日本がインドの独立を支援したことからも、日本に対して親近感を抱くインド人が多いようです。1948年の極東軍事裁判において、インド代表のパール判事は、イギリスやアメリカが無罪なら、日本も無罪であるとして、日本無罪論を発表しています。毎年8月6日の広島原爆記念日にはインド国会が黙祷を捧げ、昭和天皇崩御の際には3日間喪に服したほどで、インドは極めて親日的な国家と言えます。
しかしながら、インドの首都デリーでは、日本企業よりも韓国企業の駐在員数の方が多く、スズキなど一部メーカーを除いて、日本企業はインド市場で出遅れている感が拭えません。内陸部の夏場の最高気温は40度を超える日も珍しくなく、駐在員とその家族の方にとっては過酷な生活環境となっています。私もインドへ滞在したのは6日間だけでしたが、道路の凸凹や食事内容の制限で、気付かないうちにストレスが溜まっていたようです。多くの日本人にとって、インドはまだ異国の域を出ませんが、インド市場で日本企業が成功するためには、長期的な戦略が必要となってくるようです。
色々と書きましたが、インドという国を投資対象として見たとき、基本的に私は「Strongly Buy」を推奨します。しかし、それは短期的な株式やファンドの売買を推奨するものではなく、積立投資で長期保有を前提とした場合に、インド人の穏やかな国民性、緩やかな経済成長、人口増加と若年比率の高さといった要素が、今後10~20年のファンドの成長を支えていくことが期待されます。もちろんインド国内の様々な問題、リスクはありますが、それらがインドの中長期的な成長を妨げるリスクは現時点では極めて低いと考えられます。
これからも現場を見てから語るアドバイザーとして、今年はアジア各国への出張を定期的に実施していくつもりです。次回は、台湾、タイへの出張を予定おりますので、乞うご期待ください。
インド出張記レポートをお楽しみ頂けましたか?
↓
オフショア資産運用、個人年金プラン、貯蓄型生命保険、相続対策商品に関するお問い合わせは、お気軽にメールください。hidetaka.kitsu@gmail.com