じっくりとトロトロになるまで煎じていきます。ここが普通の生薬処方と大きく異なる点です。 |
すっかり寒くなってきました。
上海の天気は極端すぎます。夏になるのもある日突然だし、冬もまた然りです。大陸的な気候の変化ともいえますが、いきなり最低気温5℃台というのは結構答えますね。空気もより乾燥してきていますので、インフルエンザが心配です。
さて、今年も冬至を控え、中医学の世界では膏方外来が忙しくなってきています。膏方の「膏」は、膏薬の「膏」でもありますが、外用薬ではなく内服薬として使います。上海エリアでは今でも特に盛んで、私もこの時期になると膏方処方で毎年忙しくなります。
「膏方」はかなりの歴史があり、それこそ『黄帝内経』や漢代の『傷寒論』の時代から現代にまで受け継がれている中国伝統医学の伝統文化の一つでもあります。唐の時代に書かれた『千金方』なんかにも膏方の作り方が記載されているのですが、すでに現在の膏方とほぼ同じ作り方になっています。
実は、皆さんもいろいろな膏方を中国でも目にしているはずです。既製品なら、亀鹿二仙膏や茯苓膏などをよくみますし、風邪薬でおなじみの枇杷膏も実は「膏方」のグループに入ります。
こういった膏方を、それぞれの症状にあわせて処方するのが、中国の病院などで行われている膏方なのです。
地域色もいろいろあります。たとえば、上海や浙江省などで使われている膏方と、広東省で盛んな薬膳系の膏方、北方に行くと宮廷膏方なんかもあります。各地の人の体質や文化とあわさって現代まで伝わってきた中国の習慣でもあります。
膏方の多くは、「冬令進補」といって、寒い季節を迎えるにあたって、春先に向けて体を元気にする目的があります。冬至になると、陰気がもっとも盛んになるわけですが、冬至を過ぎたあたりから陽気が徐々に盛んになってきます。その盛んになった陽気を十分に体も感受し、春以降の病気予防に役立てようというわけです。冬に中国人が羊肉などを食べるのもそうした考え方とも関係があるのですが、その一つとして膏方があるわけです。
これは以前に撮影した写真なのでツボに膏方が入れられていますが、現在では持ち運びができやすいように小口に分けています。 |
では、膏方と普通の漢方・中医学の処方との違いといえば、やはり生薬の量にありと思います。通常は私の場合で15種類ぐらいの生薬を使うのですが、膏方になるとそれが30種類を超え、量も通常の2週間の量と比較すると、10倍程度に増えます。その分、服用期間も長くなります。通常は2ヶ月ぐらいは服用できます。また、場合によっては2ヶ月後に2回目の膏方をスタートさせる方もおられます。
膏方の処方は、一般的に最初の1週間程度の「開路方」で、作った処方がその人の体に合うか、確認します。まずはバランスを整え、そのあと膏方の本番の処方に入ります。
また、膏方の中身ですが一般に3つの部分から構成されます。一つは、いわゆる通常の処方でも使う生薬類。そのあと、細薬などと呼ばれるすこし高価な生薬が少量入ります。たとえば、高麗人参・西洋人参・野人参・冬虫夏草なんかがそうです。薬材が高価なので、他の生薬とは一緒に煎じないことが多いです。3つめは、輔料といってたとえばとろみをつけるための氷砂糖、紹興酒類、阿膠(ロバの皮のコラーゲン)などを適宜加えます。
膏方では1度処方すると、比較的長期にわたって処方が固定されてしまうので、一般に生薬を長期にわたって服用していて処方が比較的固定されてきた患者さんや、虚弱体質の人、女性・子供・中高年などで体の体調管理が気になっている人、慢性疾患のある人などに使うことが多いです。たとえば、私の研究でも、小児ネフローゼがほぼ収まり、再発予防・風邪の予防のために毎年冬になると膏方を処方することもありました。
膏方はなによりも味が普通の煎じ薬より苦くなく、甘みがあることが多いので、飲みやすいという長所があります。一方で、風邪などをひいてしまうと、一時的に服用できなくなってしまうこともあるので、注意が必要です。
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膏方の伝統は上海の特徴の一つです。。
冬令進補