通訳の仕事は、ある外国語を別の外国語にすること。
ですから、究極の通訳は同時通訳で、一語一語、話者の話す通りに通訳すること。
よく、国際会議などでこういった同時通訳はされているのですが、ビジネスや生活レベルでは、同時通訳すると、話が伝わりません。
「え~、このあいだはお世話になりました。」
「今回は、あれなので、よろしくお願いします。」
「ということで、うまく計らってください。」
あいまいな言葉の日本語。というだけでなく、今の日本人は、責任逃れのために日本語を使っているような気がします。
私が、「これではもうあかん」と思った理由の一つに、内装工事の交渉がありました。
現在、新しい工場の内装工事は最終段階にあるのですが、工事の内容に、こちらと工事側で大きな隔たりがあったのです。
契約はしっかりされているのですが、こちらは工事は引っ越し作業を含め、
「すべて」が含まれている。と思っており、工事側はあくまでも契約に書かれた12項目であり、特に、据え付けはするけれど、
電線などは含まない。という理解。
こちらは、もともと13万元ですべての工事を含む。という別業者があったが、それを以前、会社の金庫番だった女性の紹介で、18万元と高い見積もりのこの業者を選定した。だから、すべての工事が含まれるのは当たり前だと思っている。
でも、工事側は、工事の最中に、日本から社長の要望で、契約外の工事を行い、しかも、鉄パイプや電線を自腹で購入している。
さらに、次々と追加される工事内容と、何かあるとすぐに「工事がなっていない。だから金を払わない」という社長が信用できないのでしょう、
最終引き渡しを前に、これまで自腹で購入した資材分を回収しようとしている。
この日本人社長と、工事の監督。
両者の通訳は、同時通訳では双方ともに意味不明となるでしょう。
特に、ある程度、話をした社長は、もうこれ以上の交渉はムダ、そして不利とばかりにホテルに引き揚げました。
でも、監督は考えれば考えるほど不安になり、私に、社長に電話しろ。と迫ります。
そして、自分の主張を伝えてくれ。といいます。
社長に電話して、監督の言い分を伝えても社長の言うことはわかっています。
「余分な費用は支払わない。」
一見、正しい判断のように思えますが、契約内容に矛盾があり、また、支払いの遅延など、こちら側の違反もあります。
監督は、あれこれ考えて、社長を説得しようと、言葉を駆使します。
社長は、何を聞いても、話を聞く気さえないので、説得されるわけがありません。
そして、最終的に、自分の思うようにならない監督は:
「あの、日本人め!●▽×▲

」
「すぐに金を払え

さもないと工事したものをすべて取り払う

」
それでも応じない、社長に:
「金を払わないのなら、これから(ホテルに)行く、話し合いに応じろ

」
でも、社長は応じません。ホテルに来ても会わないといいます。
こんな通訳がビジネス通訳です。
「相手を説得すること」を要求されるのです。
もし、相手が説得に応じないと責められるのは通訳。
ちゃんと通訳ができていないと思われます。
私は、お金を任されていました。
一連の通訳は、お金を持ちながら。
私は通訳でありながら、こちらがわの金庫番でもあります。
この社長の対応で、頭にきた監督が、私の持っているお金に手を出す。
そんなことも十分に考えられます。
海外でのもめごとに関係する通訳は、いつも身体を張っている。
そう思った、1週間でした。
